健診の2次検査

健康診断で再検査が必要だという結果が出た方へ

健康診断を受けたら結果票に「要再検査」と書かれていたにもかかわらず、多忙を理由に医療機関を受診せずにいたり、受診しなければならないことを忘れてしまったりする場合があります。 しかし、せっかく健康診断を受けたのに放置すると、疾患や症状の悪化や深刻な合併症を誘発しかねません。 このようなことにならないように、健康診断の結果票に記載された「要治療」「要精密検査」「要再検査」「要経過観察」の指摘は、きちんと守りましょう。健康診断での指摘の意味をよく考え、健康の維持と向上に活かすことが重要です。

再検査は必ず必要なのか

健康診断で再検査の必要性を指摘されても、再検査そのものは義務ではありません。ただ、再検査は、生活習慣病をはじめとして無自覚だった疾患を見つける良いチャンスです。再検査で異常が認められなければ、心理的な不安も取り除かれるため、必須でなくても医師が再検査を推奨する場合もあります。

健康診断票の見方

健康診断票には、 「異常なし」「要治療」「要精密検査」「要再検査」「要経過観察」の5通りの結果と指示が記載されます。

「異常なし」の場合

すべての測定項目の数値と診察による所見が、正常と言える範囲に収まっています。治療の必要はありません。 自覚症状があって不安な場合は、別途、その旨を医師に相談してください。

「要経過観察」「要再検査」の場合

1つ以上の測定項目で数値が正常とされる範囲から外れていますが、速やかに治療しなければならないわけではありません。診断結果を念頭に食事内容や生活習慣を改善し、健康維持と疾患の予防に努めましょう。 当院では、健康診断の結果を考慮して生活習慣を改善するための指導もしています。いつでもご相談ください。

「要精密検査」の場合

健康診断に含まれる検査だけでは鑑別が困難な疾患が隠れている可能性があり、詳細な検査が必要です。ただ、精密検査の必要性を指摘されたら必ず何かの疾患が存在するとは限らず、精密検査では異常が認められない場合もあります。このため、あまり深刻に受け止めすぎなくても大丈夫です。 ただし、「要精密検査」の指摘がなされたときには、早めに医療機関を受診し、精密検査を受けるようにしてください。 当院では、健康診断後の2次検査や精密検査にも対応しています。いつでもご相談ください。

「要治療」の場合

治療が必要であることを示しています。できるだけ早く専門医の診察を受けましょう。

健康診断で引っかかりやすい項目と疾患の危険性

健康診断では、疾患リスクの判定を検査項目ごとに行います。検査で正常値を超えた場合のリスクは、それぞれ以下のとおりです。

血圧が高め(高血圧)

拡張期(最低)血圧と収縮期(最高)血圧の数値のうち、いずれか一方が正常値を超えた状態が、高血圧です。 この数値について、自宅で血圧を測定すれば正常なのに、病院で測定したときだけ値が高めになる場合があります。「白衣性高血圧」と呼ばれる現象で、平時には血圧が正常値の範囲内であれば、治療が必要ない場合もあります。 一方、平時でも血圧が高いようであれば、血管に対して継続的に負担がかかっているということです。このため、正常値の人と比べると、脳出血、動脈硬化、脳梗塞などの疾患を発症するリスクが高くなります。

血糖値、HbA1c(糖尿病)

血中ブドウ糖濃度を測定し、糖尿病のリスクを判定します。ただし、血糖値は1日の中でも変動するため、糖尿病の診断には、過去数ヶ月間の平均血糖値が反映されるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)も必要です。糖尿病があると血糖値が上昇したまま下がらず、血管にも負担がかかることから、脳出血、脳梗塞、動脈硬化、心筋梗塞などの疾患を発症するリスクが高まります。 また、毛細血管にも負担がかかり、場合によっては、腎機能障害、失明、足指の壊死などの合併症の原因になることにも注意が必要です。このうち腎機能障害では、進行すると透析治療が必要になり得ます。 糖尿病では、初期のうちはほとんど自覚症状がなく、いつのまにか進行している例が見られます。健康診断で血糖値の異常を指摘されたら、速やかに医師の診察を受けましょう。

コレステロール値(脂質異常症)

動脈硬化のリスクを判定するための項目です。悪玉(LDL)コレステロール、善玉(HDL)コレステロール、中性脂肪の血中濃度を測定します。これらの物質のうち、悪玉コレステロールには動脈硬化を促進する作用があるため、悪玉コレステロールの値が高い場合は注意が必要です。一方、善玉コレステロールには、動脈硬化を防ぐ作用があります。このため、善玉コレステロールの値が低い場合も、同じく動脈硬化のリスクが高くなります。 悪玉と善玉、両方のコレステロールのバランスを見ながら生活習慣を改善すれば、動脈硬化を発症するリスクを下げることが可能です。検査結果の数値によっては、薬物療法が必要です。

尿酸値(痛風・高尿酸血症)

尿酸は尿路結石や痛風の発症と関連し、尿酸値が高いとこれらの疾患の発症リスクも高くなります。また、尿酸が増えると心筋梗塞などの心血管障害が増えるとも言われています。尿酸は、ビールなどに含まれる「プリン体」と呼ばれる物質の代謝によって生成されることから、プリン体の過剰摂取が尿酸値の上昇を招く要因です。尿酸値が高かった場合、バランスの良い食事内容になるように食生活に注意を払うとともに、適度に運動を取り入れて、健康管理を図ることが大切です。

尿糖・尿タンパク・尿潜血

それぞれ、尿に含まれるブドウ糖、タンパク質、血液の量を示す値です。正常値の範囲から外れた場合は、糖尿病、腎炎、腎機能障害、尿路結石、尿路感染症、腫瘍などの疾患が隠れている可能性があります。症状として強い痛みを自覚している場合は、必ず精密検査を受けるようにしてください。一方、健康診断で尿の異常を指摘された場合でも、直前の食事の影響を受けてしまったなどの理由があれば、精密検査で異常が認められない場合もあります。

メタボリックシンドローム

腹囲と、血糖、血圧、脂質のそれぞれの数値に基づいて、総合的にメタボリックシンドロームの有無を判断します。判定基準は、「基準該当」「予備軍該当」「非該当」「判定不能」の4つです。メタボリックシンドロームに陥ると、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が原因で内臓脂肪が体内に蓄積されやすく、動脈硬化の原因になる場合があります。また、進行度合いによっては、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などの重篤な疾患の発症リスクを高める要因にもなり得ます。 メタボリックシンドロームの検査で「基準該当」あるいは「予備軍該当」であると指摘された方は、疾患を予防するためにも、適切な治療を受けるとともに、生活習慣の改善に努めましょう。

肝臓の数値(肝機能障害)

肝臓の状態を把握するための項目は、ビリルビン、γ-GTP、ALP、AST(GOT)、ALT(GPT)です。すべての項目で正常値から外れた場合、肝臓の働きに何らかの異常が疑われます。肝臓の機能障害の原因として多いのは、生活習慣の乱れやアルコールの過剰摂取ですが、B型肝炎やC型肝炎などの肝炎ウイルスに起因する可能性もゼロではありません。これまでに肝機能障害の指摘を受けたことがなく、初めて値に異常が出た場合、医療機関を受診して原因を明らかにしましょう。

貧血

採血をして、赤血球数、ヘマトクリット(血液中における赤血球の容積の割合)、血色素(ヘモグロビン)の量を測定し、貧血の有無を判断します。貧血と言えば、真っ先に連想されるのが鉄分不足です。しかし、婦人科系の疾患による体内での出血や消化管出血に由来する貧血もあり、ごく稀に、血液を作る造血機能の異常が原因で貧血が見られる場合もあります。健康診断で貧血だと言われた場合は、原因を特定するためにも、2次検査を受けましょう。

心電図の異常

心電図検査では、心肥大、不整脈、心筋梗塞、狭心症など、心臓病を誘発し得る要因がないかを確認します。「要経過観察」「要再検査」「要精密検査」のいずれかが指摘された場合、心臓に疾患が隠れている可能性があるため、早めに医師の診察を受けましょう。胸の痛みや息切れやなどの症状がある場合は、すぐに専門の医療機関を受診してください。

便潜血陽性

大腸がんのスクリーニング検査として広く用いられているのが、便潜血検査です。この検査では、糞便中に微量の血液が混入していないかを確認します。陽性の結果が出た場合、口腔から大腸までのどこかで出血している疑いがありますが、多いのは大腸領域からの出血です。このため、大腸カメラ検査によって悪性腫瘍やポリープなどの有無を確認します。当院では、負担の少ない大腸カメラ検査ができますので、いつでもご相談ください。

胸部レントゲンの異常

健康診断では、循環器疾患や呼吸器疾患を早い段階で発見して治療に繋げることを目的として、胸部レントゲン検査を実施します。このため、実際には治療が必要なほどではなくても、疑わしい所見があれば異常が指摘されることも珍しくありません。そこで、治療の必要性を見極めるために、胸部CT検査をはじめとする2次検査を実施します。胸部大動脈瘤、心不全、肺結核、肺がんなどの疾患の早期発見と早期治療に寄与する検査です。 胸部レントゲンで異常を指摘されて精密検査を受けたところ、肺がんが見つかったという場合、大半は自覚症状のない早期の段階です。この段階であれば、適切な治療を受けることによって治癒する可能性があります。その意味でも、健康診断の胸部レントゲン検査で異常を指摘された場合は、早めに専門の医療機関を受診することが大切です。